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泌尿器科

夜間、何度もトイレ行くために起きる(夜間頻尿)

夜間、排尿のために1回でも起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。排尿に関わる症状のうち最も頻度の多いもので、40歳以上の男女で、約4,500万人が夜間1回以上排尿のために起きる夜間頻尿の症状を有し、加齢とともに頻度が高くなります。

夜間頻尿は、日常生活において非常に困る症状です。一般に夜間2回までの排尿と3回以上の排尿の比較では睡眠の質の低下、心疾患の増加が報告されています。

 

夜間の睡眠が分断されてしまうので十分な睡眠の質が得られず、日中にウトウトしてしまう事もあります。

また高齢者の場合は夜間にトイレに行くために転倒のリスクが高く、場合によっては骨折のリスクの上昇にも繋がりかねません。

 

夜間頻尿の原因は、

  • 多尿(夜間多尿:夜間の尿量が多いこと)
  • 膀胱容量の減少
  • 睡眠障害

 

に分けられます。

多尿による夜間頻尿は尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるもので、朝起床時の尿量も含めた夜間の尿量が1日総尿量の1/3以上になり、1回の排尿量は正常です(150~200ml以上)。多尿の原因としては、糖尿病などの内分泌疾患、水分の摂り過ぎなどがあり、特に夜間の尿量が多くなる夜間多尿の原因としては、高血圧、うっ血性心不全(心臓の働きが弱った状態)、腎機能障害などの全身性疾患、睡眠時無呼吸症候群(睡眠時に呼吸が一時的に止まる病気で、いびきをかく人によくみられます)などがあります。夜間多尿は全身疾患の可能性が高く、十分な精査が必要になります。

 

膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、過活動膀胱や前立腺炎、膀胱炎などで膀胱が過敏になるために起こります。過活動膀胱は膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに膀胱が勝手に収縮してしまう病気で膀胱の老化現象や、原因が不明(明らかな基礎疾患がない)のことも少なくありません。

 

睡眠障害は、眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。

 

夜間頻尿の原因は様々ですので、適切な対処をするためには原因を明らかにすることが必要です。自分でできるチェックには、排尿日誌があります。朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を日記のように記録するものです。1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができます。

当院ではまずは排尿日誌をお渡ししております。ご自身の排尿状態を把握する事から治療が開始となります。

 

過活動膀胱では、膀胱の勝手な収縮を抑える薬剤(抗コリン薬、β3作動薬)を服用します。

しかし場合によっては薬剤を内服してもコントロールが困難な過活動膀胱も存在します。その場合はボツリヌス毒素膀胱内注入療法を当院では施行予定です。内服薬などで症状緩和の芳しくない難治性過活動膀胱の方が対象です。詳しくはこちらをご覧ください。

603cqpkc.pdf (shkt-urology.jp)

 

睡眠障害による夜間頻尿には、睡眠薬の内服も有効ですが、よく眠れるような環境の整備や生活リズムの改善も重要です。また、水分を摂ると血液がサラサラになり、脳梗塞や心筋梗塞が予防できると信じて寝前や夜間にたくさんの水分をとる方がいますが、科学的根拠はなく、水分の摂りすぎで頻尿になっている場合は水分を控えることが必要です。水分摂取過剰による夜間多尿の場合には、水分を控えるだけでも改善しますが、原因がはっきりしない場合は、泌尿器科を受診して、まず原因のチェックから始めることが重要です。

 

尿が漏れる、尿失禁がある

尿失禁とは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことと定義づけられています。40歳以上の女性の4割以上が経験しており、実際に悩んでおられる方は実は大変に多いのですが、恥ずかしいので我慢している方がほとんどです。尿失禁の状態や原因に応じてきちんとした治療法がありますので、我慢せずに泌尿器科を受診しましょう。

尿失禁といっても様々な症状があり、大きく別けると、次の4つに分類されます。

  • 1)腹圧性尿失禁
  • 2)切迫性尿失禁
  • 3)溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
  • 4)機能性尿失禁

1)腹圧性尿失禁

重い荷物を持ち上げた時、咳やくしゃみをした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁です。女性の尿失禁の中で最も多く、週1回以上経験している女性は500万人以上といわれています。これは骨盤底筋群という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が緩むために起こり、加齢や出産を契機に出現したりします。荷重労働や排便時の強いいきみ、喘息なども骨盤底筋を傷める原因になるといわれています。軽い「腹圧性尿失禁」の場合は、骨盤底筋体操で外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くすることで、改善が期待できます。また、肥満の方や最近急に太った方では、減量が有効なことがあります。骨盤底筋訓練などの保存的療法では改善しない場合、または不満足な場合は手術の適応となります。その場合は手術可能な施設をご紹介することになります。

2)切迫性尿失禁

急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまうのが切迫性尿失禁です。トイレが近くなったり、トイレにかけ込むようなことが起きたりしますので、外出中や乗り物に乗っている時などに大変に困ります。多くの場合、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮してしまい、尿意切迫感や切迫性尿失禁をきたしてしまいます。男性では前立腺肥大症、女性では膀胱瘤や子宮脱などの骨盤臓器脱も切迫性尿失禁の原因になります。治療には、抗コリン薬やβ3(ベータスリー)受容体作動薬などの薬物療法が有効です。飲水コントロール、骨盤底筋訓練、尿意があっても少しがまんする膀胱訓練などの行動療法を併用します。

3)溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

自分で尿を出したいのに出せない、でも尿が少しずつ漏れ出てしまうのが溢流性尿失禁です。この溢流性尿失禁では、尿が出にくくなる排尿障害が必ず前提にあります。排尿障害を起こす代表的な疾患に、前立腺肥大症がありますので、溢流性尿失禁は男性に多くみられます。ほかに、直腸癌や子宮癌の手術後などに膀胱周囲の神経の機能が低下してしまっている場合にもみられます。この場合は尿道に管を通して排尿する方法をとります。

4)機能性尿失禁

排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿失禁です。たとえば、歩行障害のためにトイレまで間に合わない、あるいは認知症のためにトイレで排尿できない、といったケースです。この尿失禁の治療は、介護や生活環境の見直しを含めて、取り組んでいく必要があります。

 

診断方法は、まず問診と診察をおこないます。排尿日誌を数日間つけてもらうことで排尿状態や尿失禁の程度がわかります。

 

このように尿失禁の種類や程度により、治療法は様々です。尿失禁は生命に直接影響するわけではありませんが、いわゆる生活の質を低下させてしまう病気です。困ったなと思ったら恥ずかしがったり、年齢的なこととあきらめたりせずに、どうぞ泌尿器科にご相談下さい。

尿が出にくい、尿の勢いが弱い、尿をするのに時間がかかる

排尿に関わる症状は、

  • 排尿症状
  • 蓄尿症状
  • 排尿後症状

 

に分けられます。

排尿症状は、尿を出すことに問題がある症状で、「尿が出にくい」、「尿の勢いが弱い」、「尿をするのにお腹に力をいれる」などです。

 

蓄尿症状は、尿を溜めることに問題がある症状で、「尿が近い」、「夜間排尿のために起きる」、「尿がもれる」などです。

 

排尿後症状とは、排尿した後の症状で、「残尿感:排尿後にまだ膀胱に尿が残った感じ」、「排尿後尿滴下:排尿後下着をつけてから、尿が少しもれてくる」といったものです。

 

多くの方が、様々な排尿の問題を抱えていますが、通常はこれらの症状が複合してみられます。

「尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのにお腹に力を入れるといった」排尿症状は、

  • 膀胱から尿道出口への尿の通過が妨げられる場合(通過障害)
  • あるいは膀胱がうまく収縮できない(膀胱収縮障害)

 

に起こります。

通過障害で最も頻度の高いものは男性における前立腺肥大症です。

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲む臓器で、精液の一部を産生します。前立腺が肥大すると尿道を圧迫して、尿の通過障害をきたし、排尿症状を引き起こすとともに、頻尿、夜間頻尿、残尿感などの蓄尿症状や、排尿後症状も起こします。前立腺肥大症は加齢とともに増加し、70歳では70%以上の男性が前立腺肥大を有し、その1/4は治療を必要とする症状を発症します。

 

膀胱収縮障害は男女とも神経因性膀胱で起こります。

またメタボリック症候群に伴う膀胱の血流障害や加齢による膀胱の老化現象としてみられることもあります。

神経因性膀胱とは、神経の疾患により膀胱の運動をコントロールする神経が障害を受けるために、膀胱の働きが障害される状態をいいます。原因疾患としては、糖尿病による末梢神経障害(膀胱の神経も含む)、腰部椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄(せきついかんきょうさく)症による膀胱への神経の圧迫、子宮がん・直腸がん手術における膀胱への神経の損傷などがあります。膀胱の収縮が障害されるために、うまく尿を出せず、排尿症状を中心として様々な症状を引き起こします。

 

以上のように、排尿(困難)症状は、男女ともに起こり、原因としては様々なものがあります。症状から原因を知ることは難しいので、生活に支障がある、困るような症状がある場合には、泌尿器科を受診していただければ、原因を明らかにして、薬物治療を含む治療法の説明を受けるとともに生活の注意点も指導致します。また、最近は前立腺癌が急速に増えています。前立腺肥大と前立腺癌は関連のない病気ではありますが、男性で排尿困難のある場合には、前立腺癌のチェック(血液検査で前立腺特異抗原:PSAの測定を行う)もお勧めします。

尿が出ずに、お腹が張っている(尿閉)

尿がまったく出ないという原因は2つ考えられます。

  • 腎臓で正常に造られた尿が膀胱まで運ばれ貯まってはいるが、排尿しようと思っても出てこない「尿閉(にょうへい)」の状態

 

  • 腎臓の機能低下のために尿が造られなくなり、膀胱に貯まる尿が少なくなる「腎不全」と呼ばれる状態

 

「尿閉」は「尿がまったく出ない」というとこの状態を指します。排尿の時には、膀胱が収縮し膀胱の出口が開くことが必要ですが、前立腺肥大症などにより、膀胱の出口が十分に開かなければ、膀胱は収縮しているにもかかわらず尿が出ないという状態になります。
 また、膀胱の働きをコントロールしている神経に障害がある場合には、その障害の場所と程度によっては、膀胱の収縮が不十分になり尿が出ないということが時に起こります。このような病気を神経因性膀胱といいます。
 いずれの場合にも、まったく尿が出なければ尿閉ということになります。膀胱の出口より外側の前立腺、尿道に尿の流れをさまたげる状況があれば尿閉の原因となりますが、ほとんどの場合の原因は前立腺肥大症で膀胱の出口をふさいでしまうことが原因の大部分です。前立腺肥大症では、尿が出にくい、尿の勢いが弱い、などの症状を改善するとともに、この尿閉を予防することが治療の目的となります。適切な治療法、治療期間にもかかわらず尿閉が繰り返されるときには、肥大した前立腺の程度によっては手術が必要となります。前立腺癌が進行した時にもこのような状態になることがあります。
 膀胱の働きを調整している神経が障害されて尿閉になる場合としては、直腸がんや子宮がんの手術の後の状態があります。尿閉時には、緊急処置として尿道からカテーテルを挿入して、膀胱にたまっている尿を排出させる必要があります。尿を完全に排出させたら、すぐにカテーテルを抜いてしまう方法(導尿といいます)と、しばらく尿道にカテーテルを挿入したままにする方法(尿道カテーテル留置といいます)があります。

 

「腎不全」には

  • 腎前性
  • 腎性
  • 腎後性

の腎不全があります。腎臓より前の臓器に原因があるのか、それとも、腎臓そのものに原因があるのか、もしくは腎臓の後にある尿路に異常があるのかで3つの種類に分ける事が出来ます。
 泌尿器科では主に③の腎後性腎不全を扱います。①、②に関しては腎臓内科の受診をお勧め致します。

腎後性腎不全の原因となるものは尿路結石や尿管がんなどの腫瘍による尿路閉塞、子宮癌や消化器癌などの外部からの尿管圧迫による尿管閉塞が原因として挙げられます。
 特に尿路結石による尿管閉塞は急激な腎盂内圧上昇を来しますので、急激な背部痛を来す事で有名です。4mm以下の結石であれば自然排石も期待出来ますが、自然排石が期待できないsizeの結石であったり、背部痛改善ない場合は緊急で尿管ステントを留置したり、後日手術が必要になる場合もあります。
 また癌のような悪性腫瘍による尿管圧迫をきたして腎不全を来した場合は腎機能保護目的や背部痛予防に尿管ステントを留置することがあります。その際に腫瘍からの圧迫から耐えうる尿管ステントが必要になります。当院では金属尿管ステントを採用しており、腫瘍からの圧迫に十分耐えうるものと考えております。しかし、尿管ステントが圧迫高度により留置出来ない可能性もあり、その場合は腎瘻造設が必要になる場合もあります。

尿が残っている感じがある(残尿感)

残尿感とは、おしっこをした後も、「尿が出きっていない感じ」、「尿が残っている感じ」があるという症状です。実際に尿が残っていることもありますし、尿が残っていないのに残尿感を感じることもあります。排尿後に残尿がある場合には、男性における前立腺肥大症のように、膀胱から尿道出口までの通過障害が考えられます。また、排尿時に膀胱がうまく収縮できない(膀胱収縮障害)場合にも、完全に膀胱の尿を排出できず、排尿後に残尿が発生します。
 

残尿がないのに残尿感を感じる場合は、膀胱や尿道の知覚異常が原因となります。代表例は女性の膀胱炎です。この場合には排尿時の痛み、尿が近い、などの症状とともに残尿感が出てくることがありますが、適切な抗菌薬による治療で数日以内に症状がなくなります。


 炎症が明らかではないにもかかわらず、残尿感が症状として出てくる代表的な病気には男性では慢性前立腺炎があります。慢性前立腺炎の残尿感は、前述のようにはっきりとした炎症があって出てくることもありますが、むしろ炎症がはっきりしないにもかかわらず症状として出てくることに特徴があります。多くの場合には、尿が近い(頻尿)、下腹部あるいは会陰部の不快感をともなっています。慢性前立腺炎は30-50歳代の人に見られる病気です。普通は原因が明らかではありません。一般には、抗菌薬、抗炎症薬などで治療します。残尿感などの症状がスッキリ取れるまでには時間がかかります。


一方、女性でははっきりとした炎症がないもかかわらず、残尿感が症状としてでてくることは珍しくありません。しかし、原因となっている病気を見つけ出すことが非常に困難なことが多いのも事実です。間質性膀胱炎、過活動膀胱と呼ばれるような病気が、経過の中で発見されることもありますが、例外的です。更年期の症状の一つとして出てくることもあります。症状が続くようであれば泌尿器科を受診するとよいと思います。

 

排尿痛がある

排尿時に痛みを起こす最も一般的な病気は急性膀胱炎です。急性膀胱炎は、女性に多く、頻尿、血尿、排尿時の痛みが特徴的な症状です。多くは排尿の終わりごろに尿道に不快な痛みを感じます。特に問題となる基礎疾患がなくても、尿道から細菌が膀胱へ侵入することによって起こり、尿検査により炎症細胞(白血球)や細菌が認められますが、抗生剤治療あるいは無治療でも数日以内に完治することがほとんどです。高熱や倦怠感などの全身症状、背部痛などを伴う場合には腎盂腎炎を併発している可能性もあり、重症化するリスクもありますので、すみやかに医療機関を受診することが必要です。


男性で排尿時の痛みを起こす病気には、前立腺炎や尿道炎があります。前立腺炎は尿道から侵入した細菌によって起こる細菌性前立腺炎と非細菌性前立腺炎があり、いずれも排尿時の痛み以外に、頻尿、下腹部の不快感や痛みなど多彩な症状があります。細菌性前立腺炎は、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあり、適切に治療が必要です。非細菌性前立腺炎の原因は明らかではありませんが、前立腺に慢性の炎症が起こる病気で、長時間におよぶデスクワーク、乗り物移動、運転などで、前立腺が振動や接触などの刺激を受けることが関連することもあります。なかなか治りにくい病気で、ストレスや運動不足で症状が悪化したり、再発したりします。


尿道炎では、排尿時痛は細菌感染や尿道の粘膜に傷がついたことが原因で起こります。尿の出始めに痛む場合は、クラミジア尿道炎、淋菌性尿道炎などの性感染症が原因であることが多いので注意が必要です。いずれも排尿時に焼けつくような痛みやかゆみ、発熱、不快感、尿道から黄色や白色の膿が出て尿が濁る、尿の出口が赤く腫れる、頻尿などの症状が現れることが多いですが、中には自覚症状のない場合もあります。特に女性は症状が軽い傾向にあり、気づかないうちに感染が広がるケースも少なくありません。将来的に不妊の原因となる場合もあり注意が必要です。尿道炎は放置すると尿道狭窄となることが多く、排尿に支障をきたすようになるため、早めに泌尿器科を受診したほうがよいでしょう。

PSAが高いと指摘された

PSAは「前立腺特異抗原、prostate-specific antigen」の略語で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクです。健康診断、人間ドック、かかりつけの先生のところでの検査など、PSAをチェックする機会が増えています。一般的にPSAが高い、と言われる基準値は4ng/mLとされています。PSAが高い場合に考えられる疾患は

  • 前立腺癌
  • 前立腺肥大症
  • 前立腺炎

などです。この中で、もっとも重要な疾患が前立腺癌です。

「PSAが高いと言われた」場合にはどのようにしたらよいでしょう。まず泌尿器科の施設を受診していただき、精密検査がさらに必要がどうか相談することが大切です。一般的には直腸診で前立腺が腫大しているかどうか・硬い部分があるかどうかなどをみます。また超音波検査で前立腺のサイズの測定や形態を観察します。総合的に考慮して、癌が疑われるようであれば精密検査(MRIや前立腺生検)が勧められ、適した治療がなされます。放置せず、一度泌尿器科の専門施設を受診されることをお勧めいたします。

睾丸(精巣)が腫れてきた、陰嚢が大きくなってきた

入浴中などに突然、自分の睾丸(精巣)が腫れているのに気づく。痛みも何も無い。でも、何となく恥ずかしい。悩みに悩んだあげく、泌尿器科を受診された患者さんを今まで何人も診てきました。さて、このような場合、どういう疾患を考えるでしょうか。


まず、考えるべき疾患は「陰嚢水腫」ですが、これは陰嚢内に水が溜まる病気です。小児の一部を除いて、多くの場合原因不明です。根治するためにはやはり1週間程度の入院による手術が必要ですが、針穿刺によって内溶液を吸引したりするなどの治療法もあリます。基本的には悪性の病気ではありません。超音波検査によって簡単に診断がつきます。


その他に考えなくてはならないのが、睾丸(精巣)の腫瘍です。これは、青壮年期の男子に多く、通常痛みを伴いません。一般的に悪性で、放置すると転移進展し死に至ります。腫瘍マーカーと呼ばれる血液学的な指標があり診断に役立ちますが、超音波検査も同様に診断に有効です。腫瘍と診断されれば、まず精巣を摘除し、病理学的に組織型を判定します。さらに、全身の画像検査によって、転移の検索を行います。組織型にもよりますが、一般的には転移が見つかれば化学療法(抗癌剤治療)や放射線療法を行います。転移があっても、適切な治療を受ければ多くは完治します。


睾丸の痛みを伴う腫大では、感染症(睾丸炎や副睾丸炎)や精索(精巣への血管や精管の束)の捻転を疑います。感染症では投薬による治療を、精索の捻転では整復術あるいは睾丸の摘除術が行われます。なかでも、精索捻転症では、発症後6-10時間のいわゆるgolden time(回復可能な時間)を過ぎると、整復(手術あるいは用手的に)されても睾丸そのものが壊死していることが多く、捻転が疑われれば早期に手術を受けていただくのが望ましいと考えられています。

陰嚢が痛い

陰嚢内が痛む病気には、精巣捻転、精巣上体炎、および精巣炎などがあります。これらはいずれも比較的急速に発症するために急性陰嚢症と呼ばれます。また、鼠径ヘルニア(脱腸)を陰嚢の症状とあやまる場合も時にはあります。


  • 精巣捻転は、精巣がそれにつながる精索(せいさく)を軸としてねじれて血管が締め付けられるため血流が途絶し、精巣が壊死する病気です。思春期前後の青少年に多く,寝ているときに発症することが多いのが特徴です。激しい陰嚢部痛で始まり、次第に陰嚢内容が腫れてきます。吐き気や嘔吐(おうと)を伴うこともあり、症状が正確に伝えられない年少児では、「おなかが痛い」という訴えのために見落とされることがあります. 6~12時間以内に血液の流れを回復しないと精巣は壊死(えし)しますので、発症早期の診断治療が重要で医師や患者がこの疾患を念頭におくことが重要です。診断は超音波検査で精巣への血液の流れが低下していることを確認することです。診断が確実でない場合は緊急手術が勧められます。治療は、ねじれた精索を戻して血液の流れを回復させて精巣を陰嚢内に固定することで、緊急手術として行われます。時間が経過して精巣がすでに壊死に陥っている場合は、精巣を摘出します。残った健康な側の精巣も今後ねじれないように同時に固定する場合も多いです。
  • 精巣上体炎(副睾丸炎)は、精巣の横にある精巣上体(副睾丸)に炎症がおこって腫れることです。「精巣が腫れている」という訴えの方も多いですが、精巣の横に硬いシコリが触れます。超音波検査で、正常な精巣と血液の流れが増加している腫大した精巣上体がみとめられます。成人では、尿道や前立腺の細菌感染が精管を伝わって、精巣上体まで及んだ時に発症します.痛みと発熱を伴い急激に発症することが多いのが特徴です.また、症状に乏しく精巣上体に痛みのないしこりを触れるときには,結核性によるものもあります。治療は、抗菌薬の投与を感染が完全に治るまで行います。また、陰嚢内の痛みのないシコリは精巣の癌であることがありますので、放置せず泌尿器科に受診することが必要です。
  • 精巣炎は、流行耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん:いわゆる"おたふく風邪")に伴って起こるものが代表的です. 思春期以降の流行性耳下腺炎の約20%に合併し、耳下腺炎発症の3~5日目に痛みを伴って精巣が腫れてきます。精子形成障害を起こすことがあります。

背中が痛い

腎臓はそら豆のような形をした握りこぶし大の一対の臓器です。手を後ろに回してわき腹と背骨の中間あたりの場所にあります。ちょうど腰が痛い時にとんとんと叩く場所をイメージしてください。


腎臓は尿を作る臓器です。その他にも血圧に関係する物質を作ります。普段は何も感じませんが、何らかの原因で痛みを生じる時があります。腎臓は腎被膜という膜に囲まれています。その膜が急激に引き伸ばされると痛みが出現します。その典型的なものが、尿路結石による痛みです。腎臓から膀胱に尿を運ぶ尿管の中の石が詰まって、上流の腎臓側の尿管や腎盂といわれる部分に尿が過剰にたまり、腎盂の内圧が上昇します。この状態を水腎症といいます。急激に水腎が起こると激痛を伴い、多くの場合、救急外来を通じて泌尿器科に受診されます。その他の水腎症の原因として、尿管狭窄(きょうさく:狭くなること)や、尿管腫瘍などによる尿の通過障害や、膀胱の働きが悪いために尿の流れが悪くなるような病態があります。

その他にも腎臓の動脈が血栓で詰まる腎梗塞(じんこうそく)という病気でも激しい痛みを生じます。


水腎症は超音波検査で簡単に診断がつきます。その他の病態もCT検査などで原因を詳しく調べることが可能ですから、腎臓のあたりに痛みを感じた場合は、早めに泌尿器科を受診してください。

勃起力が低下した

勃起は性的興奮が高まった時に起こります。性的興奮により、勃起に関係する神経から特殊な物質が放出され、陰茎海綿体に信号を送ります。このことにより、陰茎海綿体に動脈血が多く流れ込み、血液が充満していくことにより勃起が起きるのです。


勃起障害は英語でErectile Dysfunctionといいますが、その頭文字をとってEDと呼びます。EDは種々の原因で起こります。覚えておいていただきたいことは、EDは局所だけの疾患ではなく、全身疾患の一つとしてとらえなければならないということです。主な原因としては、加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、うつ病、前立腺肥大症、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、神経疾患などがあり、また服用中の薬剤による副作用が原因でEDとなる場合もあります。


この原因を見ていただくとお分かりのように、単に「年のせい」だけなく、メタボリック症候群のような生活習慣病もEDの大きな原因なのです。そして、多くの心血管疾患(心筋梗塞、狭心症など)の患者さんが、その発症前にEDを自覚しています。高血圧で41.6%、糖尿病で42%、高脂血症で20%の患者さんがEDであったというデータもあります。つまり、EDになったら他の全身疾患が進行しつつあるかもしれないということなのです。たかが、EDと侮ってはいけません。早めに泌尿器科へ受診しましょう。とにかく、EDを自覚したら泌尿器科を受診してください。全身疾患の前触れかもしれません。高血圧や糖尿病が見つかるかもしれません。そのような病気があれば、その治療も行い、そしてEDの治療も積極的に受けてください。ED治療薬は勃起を良くするだけではなく、全身の血管の働きも良くする作用も認められています。現在3種類のED治療薬が使用できます。インターネットなどで販売されている薬は偽物が多く、有害な物質が含まれている可能性があるので、決して手を出さないようにしてください。


本物(正規)のED治療薬は医師の処方箋が必要なので、ためらうことなく泌尿器科を受診してください。EDの治療の目的は「満足のいく性的関係を回復すること」です。性的関係のないカップルは不自然な関係といえます。決して恥ずかしいことではなく、むしろ良いカップルライフを送る上で大変重要なことです。ED治療の大切さを改めて認識してください。

 

尿道から膿が出る、排尿時に焼けるような感覚がある

膿とは、炎症を起こした部位が化膿して生じる黄白色または黄緑色の不透明な粘液で、主に白血球と血清からなり、その他壊れた組織や死んだ細菌などが含まれています。尿道口から出ている膿の状態には大きく二つあります。ひとつは膿の色が濃く、多量に出ている状態です。もうひとつは膿の色が薄く、量も少ない状態です。


尿道口から膿が出るのは、尿道口から侵入した病原菌が尿道の粘膜に感染して尿道炎を起こしているのが原因です。そのため、感染を予防するにはコンドームの使用がすすめられます。尿道炎は主に性行為によって起こり、性感染症に含まれます(以前は性病と言われていました)。性行為があって2~7日の潜伏期間の後に尿道口から濃い膿が多量に出て、強い排尿痛を認める場合は淋菌による尿道炎(淋菌性尿道炎)が疑われます。一方、性行為があって1~3週の潜伏期間の後に尿道口からやや水っぽい薄い膿が少量出て、排尿痛が軽い場合は淋菌以外の病原菌による尿道炎(非淋菌性尿道炎)が疑われ、その約半数はクラミジアが原因です。尿道炎は、普通の性交の他、オーラルセックスでも起こることが少なくありません。その場合セックスパートナーの咽頭にこれらの病原菌が潜んでいると考えられます。注意しないといけないのは淋菌性尿道炎の20~30%にクラミジアが混合感染している場合がありますので、淋菌性尿道炎ではクラミジアの検査も同時に行うことがすすめられます。尿道炎の治療には抗菌薬を使用しますが、淋菌とクラミジアに対して使用される抗菌薬の種類が大きく異なりますので、必ず泌尿器科でよく診察してもらって、治療を受けて下さい。現在、わが国でみられる淋菌では経口の抗菌薬が効きにくくなった菌が増えていますので、淋菌に強い殺菌力を示す注射薬を1回のみ投与する単回投与療法がすすめられています。クラミジアは経口の抗菌薬が良く効きますが、一般的に7日間内服しなければなりません(ただし、1回のみ内服する薬が処方されることもあります)。症状が軽くなっても必ず毎日内服し、最後まで続けることが重要です。中途半端に中止すると再発する場合があります。まれに淋菌やクラミジア以外の微生物によっておこっている場合(非淋菌性非クラミジア性尿道炎)もあり、最初に処方された抗菌薬で治りにくい場合には別の抗菌薬を内服する必要があります。そのため、治療後にも検査を受け、治癒していることを確認することも重要です。


性感染症としての尿道炎の場合、ピンポン感染(ピンポン玉のやりとりのように、病原菌をうつしたり、うつされたりを繰り返すこと)を防ぐために、セックスパートナーも一緒に検査と治療を受ける必要があります。

排尿症状を伴う発熱がある

<女性の場合>

腎盂腎炎

女性では尿道長が短い、膣に細菌が定着しやすいなどの原因で、直腸常在である大腸菌などの細菌が尿道口から侵入しやすいため、男性に比べて尿路感染症が起こりやすいとされています。細菌が尿道から膀胱へ侵入することにより膀胱炎が起こりますが、さらに細菌が尿管をさかのぼって腎臓まで達することで腎盂腎炎が起こります。

腎盂腎炎の症状

頻尿、排尿痛、残尿感、下腹部痛など膀胱炎症状に加え(自覚しない場合もあります)、発熱、全身倦怠感、腎周囲の腰背部痛などの症状が認められます。悪心、嘔吐などの消化器症状を認めることもあります。尿検査では、混濁尿(膿尿/細菌尿)が認められます。

腎盂腎炎の治療

比較的全身状態が良好な軽症例では、経口抗菌薬による外来治療が可能です。しかし、食欲不振、脱水、全身倦怠感などが強い重症例では、入院のうえ点滴による治療が必要です。解熱して全身状態が改善すれば、退院して経口抗菌薬による外来治療を継続します。

<男性の場合>

前立腺炎とは

男性では直腸常在である大腸菌などの細菌が前立腺に侵入して炎症を起こすことがあります。男性が腎盂腎炎になることはまれで、排尿症状を伴う発熱を認める場合には、急性細菌性前立腺炎である可能性が高いと考えられます。

前立腺炎の症状

発熱、全身倦怠感などの全身症状と、排尿痛、頻尿、尿意切迫感、排尿困難、下腹部痛、会陰部痛などの排尿症状をきたします。腫大した前立腺のために排尿困難や尿閉(膀胱に充満している尿を排尿できない状態)をきたすこともあります。尿検査では、混濁尿(膿尿/細菌尿)が認められます。

前立腺炎の治療

比較的全身状態が良好で軽症例では、経口抗菌薬による外来治療が可能です。しかし、食欲不振、脱水、全身倦怠感などが強いような重症例では、入院のうえ点滴による治療が必要です。解熱して全身状態が改善すれば、退院して経口抗菌薬による外来治療を継続します。

 

精液が赤くなった

精液に血液の混入があると、精液が赤くなります。この状態を「血精液症」と呼びます。精液は精巣から精巣上体・精管を経て移動してきた精子と精嚢および前立腺の分泌液が混じていますが、精液液状成分の大部分は、精のうおよび前立腺の分泌物が占めていますので、出血部位は多くの場合は精嚢または前立腺です。


出血の時期が古いとどす黒くなり、血液の塊が混じることもあります。逆に比較的新しい出血では鮮血色になります。一般的に、射精時に痛みを伴うことは少ないですが、逆に痛みがあるときは炎症が疑われます。精嚢または前立腺の炎症や、うっ血などの局所の循環障害が比較的多いですが、他の原因として考えられるのは、精子輸送路(精巣・精巣上体・精管・精のう・前立腺)の腫瘍、のう胞、結石などが挙げられます。また、血液凝固異常(血が止まりにくい)や血管が脆弱のため出血しやすい状態の場合、射精時のいきみで精嚢の微小血管から出血することがあります。しかし、多くの場合では検査をしても異常が確認できないため、特発性血精液症と診断されます。泌尿器科診察では、精巣・精巣上体などの外陰部診察を行い、次に直腸診で前立腺・精のうに異常があるか調べます。超音波検査は更に精度の高い検査ですので、診察の後に行う場合が少なくありません。検尿で血尿を伴う場合は膀胱や腎臓に異常がないかも超音波検査で調べます。超音波検査で異常を認めたり、腫瘍の存在を否定する必要がある場合はCT、MRIなどを追加することもあります。また、中高年以上の方は前立腺癌の有無を調べるためPSAという腫瘍マーカーの採血を行います。ただし、血精液症の方で癌が見つかる確率は高くありませんので、余り心配する必要はありません。検尿や診察で精子輸送路(精巣・精巣上体・精管・精のう・前立腺)の炎症があると診断した場合は、抗生物質や抗炎症薬で治療します。


以上の検査で特に問題ない場合、無治療で経過観察していただきます。多くの場合は、精嚢に貯留した古い血液が、その後何度か排出されるため、完全に血精液が消失するのに、1-2ヶ月要する場合も少なくありません。多くの場合、検査をしても原因が特定できない特発性血精液症と診断されますが、症状が続く場合や、悪性腫瘍の発生が多くなる高齢者は、泌尿器科を受診してください。


若い方の場合、血精液症で性交を行っても女性パートナーへ悪影響を及ぼすことはありませんが、炎症が原因の場合は感染する場合もありますので、少し性交を控えた方が良いでしょう。

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